【関連記事】「至福のデュオ」音楽の友 2013年9月号 インタビュー 文・小倉多美子

常に斬新な切り口と最新研究の把握によって、新たな発見と楽しみに遭遇できるのが、青柳いづみこのコンサート。9月に2夜、まさに青柳ならではの企画が打ち出される。

第1夜第1部は、ラヴェルとの”ハバネラ”問題を中軸に、ドビュッシーのスペインへの憧憬が託された作品群(まさにグラナダ症候)がフィーチャーされた。《グラナダの夕》《リンダラハ》等を、トークを交え、また《白と黒で》には霊感を受けたゴヤの版画『ロス・カプリッチョス』も投影される。第2部ではジョヴァニネッティを迎え、ファリャ、グラナドスを加えて、スペインの魅力もリンクされる。

そして第2部のもう1つの聴き所がオーリッジ補筆の《セレナーデ》。ドビュッシーが遺した12小節の断片を基に、音楽学者ロバート・オーリッジが82小節に補筆完成したもの。「娘エンマがアナイス・ニンの父ホアキンに贈ったエスケースが競売にかけられ、それをオーリッジが競り落としたそうです。現在ドビュッシーに関しては、遺族から引き継いだ世代が亡くなったりして、断片など様々なものが世に出てきている時埼研究者にとっては大変な時代でしょう」。2012年パリでのドビュッシー国際シンポジウムで断片から構築した《ポエム》で話題となったオー リッジから直に送られた楽譜での東京初演。最新の動向研究と広い国際的交流なしには実現しないプロであり、さらにオーリッジ版《鐘楼の悪魔》への関心も示している。

聴き逃せないのが、20日のデュオ。イザイ、エリゼと、フランスを代表するカルテットの第1ヴァイオリンを歴任にした名手と青柳が「最も深めてきたのが、モーツァルトとシューベルト。共に、明るい色調の中に悲哀感が、また短調の中に輝きがあったりと、表現は多層的です。彼は、モーツァルトのヴァイオリンの音色を真に表現できる人であり、ピエルネの第2楽章など、声優の声色のような微妙なコントロールで得も言われぬ瞬間を創出しています」。第2夜への期待は大きい。

CDアルバム『ミンストレル』発売記念 「至福のデュオ」連続コンサート
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