青柳いづみこが浜離宮朝日ホールを舞台に、ふたたびドビュッシーに取り組む。4回に亘るシリーズは、各々にテーマを設けながら「時間の流れ」に焦点を当て、ドビュッシーを丁寧にひもといていく。第1回は3月20日の「東の時間、西の時間」。プログラムは『映像第2集』『版画』、そして武満徹の『遮られない休息』や『フォー・アウェイ』など。
「ドビュッシーは若い頃、ジャワのガムランにふれて感銘を受けました。それまで傾倒していたワーグナーに行き詰まりを感じていた時で、それから東洋に近づいて行きました。また武満さんはドビュッシーやメシアンに影響を受けたとおっしゃっていて、独特の時間の流れや音響を組み合わせてステキな曲を書いています。今回はドビュッシーと武満さん、それぞれの時間の流れが似ているのか、違うのか、ステージで確かめてみたいと」
練習段階では、ドビュッシーでは時が確実に前に流れているが、武満には西洋的・規則的な律動がなく、以外な個所にffが出てきたり、ppの次にfがあったりその連続性はない。非常にスタティックで、その場に浮かんでいるような、つまり流れは感じられないと分析する。さらに後半ではジェラール・プーレをゲストに招き、トークとともにドビュッシー『ヴァイオリン・ソナタ』や武満作品を共演。「フランス人が武満さんを弾くと時が流れるかもしれないし、その辺り同処理するか興味がありますね。彼はドビュッシーの『ヴァイオリン・ソナタ』を初演したガストン・プーレの息子さんですから、初演時のお話も聞けると思いますし、プーレさんご自身が武満作品を弾いてどう感じたか、2人の作曲家の相違とか、その辺りがポイントですね」
この日には、『版画』『12の練習曲』ほかを収録した最新CD『ドビュッシーの時間』のリリースが予定されており、また旧著『ドビュッシー 想念のエクトプラズム』も中公文庫から刊行される。いずれにせよ極めて興味深いプロジェクトには違いない。