ポーへの傾倒、破滅的描写に ドビュッシーの未完のオペラ上演
米国の作家エドガー・アラン・ポーの作品に感化されてフランスの作曲家らが19世紀末から20世紀初頭に作った作品の演奏会が24日、東京・築地の浜離宮朝日ホールで開かれる。ピアニスト青柳いづみこの企画で、中でも、ドビュッシーによる未完の1幕物オペラ「アッシャー家の崩壊」が注目される。
ポーの怪奇と幻影に満ちた作品は、ボードレール、マラルメらフランスの象徴派詩人たちに大きな影響を与えた。これら文学者を通して作曲家にも多くの題材を提供したが、最も感化されたのがド ビュッシーだ。
オペラ「ペレアスとメリザンド」の初演(1902年)後、「鐘 楼の悪魔」でポー作品の初のオペラ化に取り組んで行き詰まり、08年には「アッシャー家の崩壊」に着手する。自ら台本も手がけて3種類書いたが、結局、2場の途中で作曲は中断された。
主人公ロデリックの年齢を引き上げたり、ポーではあいまいな近親相姦(そうかん)を設定したり、壁石を前にロデリックの独言が延々と描かれる、など原作の変更が見られる。
「創作の苦しみを見ても、その傾倒ぶりがわかる。晩年は直腸がんで死の恐怖を感じており、作品への破滅的な自己投影に拍車をかけたのではないか」と青柳。
作品はオーリッジ版のボーカルスコアに基づき、音楽の付いていないせりふも加えて演奏される。青柳がピアノを受け持ち、森朱美(マデリーヌ)、鎌田直純(ロデリック)らが出演する。
他には、ドビュッシー作曲の「鐘楼の悪魔」による「コンクールの小品」などのピアノ曲やカプレが書いた「赤死病の仮面 ハープと弦楽四重奏のための」などが演奏される。
演奏は青柳と早川りさこ(ハープ)、クァルテット・エクセルシオ。
文・上坂樹記者