二刀流生活のノンストップな日々
ピアニスト青柳いづみこの日常はすこぶる多忙である。なぜなら、「モノ書き」という肩書がそこに加わるから。しかも音楽エッセーにとどまらず、本格的な研究書や評伝をものし、各賞を授賞する本格派なのである。
『青柳いづみこのMERDE(メルド)!日記』は、そんな二刀流生活9年分をまとめたエッセーだ。休みなく、この「二刀流」の離れ業をこなし、海外へも出かける。タイトルに「MERDE!(くそったれ!)」とある通り、ときに怒りもするが、著者の本性は明るくにぎやかだ。
だから綱渡りの毎日にハラハラし、頻出する固有名詞の波に洗われながら、とてもほがらかな気持ちになる。ファッションは古着屋とガード下のつるし専門で、松田聖子のファンと意外な顔も。
「音楽書にしては、文学や美術のことが沢山出てくるし、文学書にしては、音楽のことが語られすぎている」は自著への評だが、その両輪が青柳いづみこの推進力でもある。敬愛する吉田秀和邸への訪問記がとてもチャーミング。