作曲家ドビュッシーの人となりや作品・現代との接点を、約40曲のピアノ作品を窓口につづったエッセー集である。楽器メーカー会員誌での連載をまとめたもので、内容は軽やかで親しみやすい。だが、その一筆書きのような持ち味は、ピアニストであり文筆家でもある筆者の真骨頂だ。演奏法や解釈のツボを、楽理の隘路<あいろ>に潜らずさらりと記す。演劇・美術から現代日本のポップスとの関連まで、音楽を社会の文脈でとらえる視点が、作品の新たな切り口を際だたせる。ドビュッシーが目指したものは、東洋的な美意識をよりどころにした「平面的な音楽」で、西洋人よりも東洋人の感性にぴったりはまるという指摘は、重みがある。
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