「うたうリスト」リストの歌曲の魅力を心ゆくまで味わう
リスト生誕200年記念イヤーも残り余すところ1ヵ月を切った12月2日、注目のコンサートが開催される。
リストといえば、めくるめく超絶技巧を駆使したピアノの名人芸がイメージされるが、彼の仕事はそればかりではなかった。なにしろ、彼は音楽史上初の独演会=リサイタルを創始した人。それまでの演奏会とは、交響曲あり、器楽曲あり、歌曲あり、の多彩なプログラムを擁していたから、1人ですべてを弾いてのけるには他ジャンル楽曲のピアノ独奏版編曲が不可欠だった。ことに声楽曲のピアノ編曲は、人声をピアノに置き換えるというピアニストの表現意欲を刺激してやまない魅惑のジャンル。かくしてリストは、自作および他作曲家の歌曲をせっせとピアノに編曲した。
この点に着眼し、編曲されたピアノ曲と原曲の歌曲を対比させつつ、リスト歌曲の叙情性、歌謡性を心ゆくまで味わってしまおう、というのがこのコンサートの趣旨。仕掛け人はご存じ、ピアニストであるとともに文筆家、研究者としても活躍中の青柳いづみこだ。彼女が初めてその歌声を聴いたときの「衝撃は言葉にならないほど」だったと絶賛するカウンターテナーの村松稔之と、やはり青柳が「強靭な歌唱力と多彩な表現が聴きもの」と高く評価するバリトンの和田ひできが出演する。リストゆかりのべーゼンドルファーのピアノが使用されることと、音楽之友社創業70周年にちなみ、同社の創業者、堀内敬三の訳詩で歌われることも興味深い。