日本人の入賞に沸いた昨年のショパン国際ピアノ・コンクールについて、現地で見聞したピアニスト・文筆家の著者は、「いささか旧態依然としたコンクールのスタンスに新風を吹きこむ数々の革命が起きた」と評する。
楽譜に忠実で「ショパンらしい演奏」を好む審査員に対し、自由で奔放、個性的な解釈を全面に出した若きピアニストたちが、動画配信で得た人気も加勢して、聴衆を席巻していくドラマが、微に入り細をうがつタッチで描かれる。
時代と共に変わる名演の基準に、プロもまた翻弄される。その姿は音楽に正解はないことを改めて教えてくれる。(良)