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| 2003年1月13日/肩書き
新年最初の朝日の書評委員会に行ったら、尊敬する作家の川上弘美さんから、文芸誌三誌の2月号の広告に名前が出ていたヨ、と声をかけられた。30枚書いた『すばる』と130枚(広告では120枚になっていた・・・原稿料が10枚ぶんも少なくなった、ケシカラン!)『文学界』はそれなりに大きい活字だったが、たった3枚の『群像』は、大相撲の序の口力士ほどの活字の大きさ。よく気がついてくれたなぁ。ちなみに文芸4誌の広告、大新聞では朝日しか載せていない。だから、朝日新聞購読者と他新聞の読者とでは、認知度に大きな差があるわけです。 どの雑誌も、巻末に書き手の簡単な紹介を載せている。私の場合、これがいろいろで面白かった。『文学界』は「ピアニスト、作家」。『すばる』は「ピアニスト、エッセイスト」。『群像』は「音楽家のワタシ」を無視して、「芸術評論」だけ。たしかに、芸術評論の賞である吉田秀和賞をいただいているけど、ピアノのコンサートでは過去に文化庁芸術祭賞も受賞しているし、これってあんまりじゃない? 朝日新聞でも、書評のあとに必ず肩書をつけるのだが、最初来た書類では「作家・音楽家」となっていて、あわてて変えてほしいと申し出た。だって、その時点では小説書いてなかったもん。書き方がわからなくて、思いあまって朝日カルチャーセンターに行こうとしたら、向こうから講師の依頼が来た。 フランス語で作家に当たる言葉は「エクリヴァン」で、これは小説のみならず文章を書く人のことを指すのだが、日本では小説家に限定されるらしい。作家はダメとして、何に変える? 代案は「エッセイスト」か。うーん。暮れの慶応のシンポジウムの肩書もそうなっていて、これには猛反発した。だって、ドビュッシーの評伝が337ページ、安川加寿子伝は321ページ、青柳瑞穂伝も316ページ。どちらかというと理論武装したい方なので、短い言葉に深い味わいを託す日本風のエッセイは、むしろ苦手なのだ。外国では、モンテーニュの「随想録」でもわかるように、エッセイと言ったら自由な評論のこと、論じる意味合いの方が大きくなる。 前は、肩書をどうしましょうかと訊ねられると「ドビュッシー研究家」と答えていたのだが、ドビュッシーと限定するには、仕事の領域がひろがりすぎてしまった。「著述業」という案もあったのだが、何回練習しても「ちょずちゅぎょう」になってしまうので、あきらめた。『群像』の前の前の編集長だった渡辺勝夫さんが、ドビュッシーの本の出版記念会で、「本も五冊書けば、作家とはいえないまでも文筆家を名乗ってもよいだろう」とスピーチしていらしたので、それを思い出し、「文筆家」で行くことにした。 自分では、ピアノ弾き×モノ書きという感じが一番ぴったりくる。この2つ、本妻さんと二号さんのような関係。本妻さんのところに長くいると妾宅に行きたくなるし、逆もまた真ではないかな。二号さんのところで過ごす方がずっと楽しいのも、真。でも、あんまり浮気しすぎると、ピアノのお師匠さんの安川加寿子先生が、六条の御安所みたいに夢の中にあらわれる。あわてて、音階を練習する。今のところ、CDが4枚、本が7冊だから浮気過多、だんだん火宅の人になってきた。 さて、今年の私の仕事は・・・。珍しく本妻さんが多い。2月15日に座間市のハーモニーホールでおしゃべりコンサート、3月2日には京都ブライトンホテルで、心理学者・文化庁長官の河合隼雄さんと、「水と音楽」というテーマでトークコンサート。河合さんのフルートでフォーレの「シシリエンヌ」ドビュッシーの「小舟にて」、私がピアノでドビュッシーの「水の反映」や「沈める寺」、ショパン「バラード第3番」などを弾く。京都市の「水フォーラム」に関連した企画で、市長さんも挨拶なさるとか。 4月1〜3日まで、レコーディング。 今年のテーマは 「狂乱のワルツ」で、ウィンナ・ワルツに魅せられ、 「ぼくは狂乱してワルツを踊っています・・・」と書いたラヴェルの 『高優で感傷的なワルツ』、ラヴェルが手本としたシューベルトの『高雅なワルツ』、サティのパロディ『嫌らしい気取り屋のための高雅なワルツ』、ヨハン・シュトラウスU世のワルツをアレンジしたシュルツ=エヴラーという人の 『美しき青きドナウの主題によるアラベスク』、ウィンナワルツに反撥していたショパンのワルツ6曲、けだるいワルツの見本のようなドビュッシーの 『レントよりなお遅く』、悪魔的なワルツとして、リストの 『忘れられたワルツ』、『メフィスト・ワルツ』といった布陣。くるくるまわってばかりで、目まいを起こしそう。11月には、朝日新聞主催で、浜離宮朝日ホールでのリリース記念リサイタルも予定されている。 書くほうは、とりあえずピアニスト論。ポリーニ、アルゲリッチ、ミケランジェリ、グールド・・・。ポリーニについては『すばる』に載せたものを拡大させ、アルゲリッチは別府の「アルゲリッチ音楽祭」で取材して来ようと思っている。グールドは、以前『ユリイカ』に載せて評判のよかった評論を敷衍させる予定。 その他に、リヒテルや内田光子、エリック・ハイドシェック、アンリ・バルダなども候補に上がっている。 朝日の書評委員は、最初に任期2年と言われたので、たぶん来年度も継続されるだろう。連載は、『ムジカノーヴァ』の「ピアニストは指先で考える」。小説も、一本書くとウソをつく楽しさに目ざめてしまってやみつきになりそうだが、これは編集者のハッパ次第。書きたいテーマは沢山あるのだけれど、「ジュンブン」はむずかしくて。 そんなわけで、2003年も私の活動をよろしくお見守り下さい! |
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