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| 2002年9月26日/青山のブティック初体験 「メルド日記」の何回目かに、今の私は全くおしゃれをしない、古着屋とガード下の吊るし専門・・・と書いた記憶があるが、このたび、生まれてはじめて青山のブティックに足を踏み入れた。といっても、お買い物ではなく、撮影用の衣装を借りに行っただけだけれど。 読売新聞から、夕刊の女性欄「ひとりごと」に執筆を依頼された。去年も、家庭欄で月がわりのリレーエッセイを頼まれたことがあるが、今回も同じで、十月の月曜日ごとに千字程度のエッセイを書く。これだけなら何ということはないのだが、その欄はかなり大きな写真も掲載していて、そのための撮影が必要とのこと。しかも、毎回違う場所で、衣装も変えて撮るのだそうだ。 ──どこかご自宅の近くで、お好きな場所はないでしょうか。 記者の方は、おっしゃる。 10月の月曜日は祝日を除いて3回だから、3か所選ぶ必要がある。いろいろ考えた末、ピアノを弾いているところを撮るために、中野坂上にあるベーゼンドルファーのスタジオを借りることにした。勿論、家にもピアノはあるが、部屋を片づけるのが一大事だから。あとは、井伏鱒二や太宰治も来たことのある家の玄関の前で1枚、それと、阿佐ヶ谷の有名な音楽喫茶「ヴィオロン」で1枚。ここは、店全体が音響箱のようなところで、巨大なスピーカーで、昔ながらのLPレコードを聴かせてくれるのだ。買い物のついでに立ち寄り、店長さんにお願いしたら、快く撮影を許可して下さった。 場所は決まったが、問題は衣装だ。新聞社から、サンプルとして、作家の小池真理子さんの記事が送られてきた。 ──うわっ、きれい。 もともと美人でスタイル抜群の方なのだが、どのショットも、まるで女優さんみたいに撮れている。こりゃ、やばい。私はあわてて、個人的にプロデュースを頼んでいる女性──このホームページの管理者でもある──Kさんに「スタイリストさん、知らなーい?」と電話した。 顔の広い彼女は、あちこち電話したあげく、青山の骨董通りでブティックを開いている女性を探し出してくれた。とてもいい方で、一度会っただけで、その人の内面まで見抜き、ぴったりの衣装を見つけて下さるのだという。 「当日は立ち会えないそうですから、私が細かい注意を全部伺って、その通りにします」 とKさんは言う。 念のために、私が普段着ているものをいくつか持って、Kさんと一緒にブティックに出かけて行った。店長さんは、昔はモデルさんだったではないかと思うような、スラリとしたステキな女性だ。 「自慢じゃないんですが、こういうところは伺ったことがないので」と恐縮する私に、「花柄がお好きなんですね」とやさしくおっしゃる。私が持って行った洋服は赤系が多いのだが、白黒の写真の場合、赤はあまりきれいに写らないとのこと。 「今は、はざかい期なので」とおっしゃりながら、何点か見つくろって出してきて下さった。早速、ファッション・ショーをはじめる。 茶系のベイズリー柄の上着はエトロのもの。とても上品でサイズもぴったりだったが、あまり高級すぎて借りて来た猫みたいになりそう。豹柄の薄手のブラウスは、首のところがシースルーになっていて色っぽいのだが、少しきつくて、下着の線が出てしまう。すそにフリルのついたフェイクレザーのスカートは、ちょうどいい丈ですごくスリムに見えるのだが、残念ながら、ウェストがちょっぴりきつい。ウェストのホックをはずして着ることにする。 いろいろ試した中で、先端に鳥の羽根のついたスカーフつきの上着をひと目で気に入ってしまった。とてもしなやかな生地で、ウェストがしぼってあり、身体に自然にフィットするのに、体型の欠点は隠してくれる。 きゃはんのような形になっている袖口もしゃれている。 着てみると、これがまた、計ったようにぴったり。私は腕が短いので、袖丈だけは少し補正が必要だけれど。 もう一着、ビロード地の花柄のブラウスも好きだった。シャツ・カラーで前身ごろと袖口にフリルがついていて、レトロな感じがいい。さっきの上着と同じように、無理なく身体の線に沿っているので、とてもすっきり見える。同じ柄でスカートもあったのだが、上下花柄だと少しくどいので、ボトムはフェイク・レザーのスカートを合わせる。 以上3点をお借りし、家の玄関前では鳥の羽根つきの上着、音楽喫茶では花柄のブラウス、ベーゼンドルファーのスタジオでは私物の花柄ワンピを着ることにした。 選び終わったあと、お茶を飲みながら少しお話しした。海外に買いつけに行かれるときは、あらかじめ常連さんの要望をきいておいて、ぴったりのものを探してこられるので、人気があるのだという。体型や好みだけではなく、人間性についての深い洞察力があるからこそできることだろう。 ブランドのブの字も知らないし、ファッション用語も全然使えない。青山のブティックということで、かなり緊張して出かけて行った私だが、店長さんの飾らない、偉ぶらないお人柄のおかげで、少しも劣等感を感じないで衣装選びをすることができた。これからも、何かにつけ 「SOS!」 と飛び込むことになりそうだ。 |
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