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「私のすすめる岩波新書」より 小澤勲 著「痴呆を生きるということ」(岩波『図書』2008年)

『痴呆を生きるということ』(小澤勲) ついさきころ、95歳の母を見送った。 認知症で自宅介護7年、施設入所8年。 本書が刊行されたときはすでに施設にお世話になっていたが、認知症を病む人々の内面をおしはかり、深いいつくしみ…

【書評】桐生典子 著「天上の白い笑み」(サンデー毎日 2007年8月5日号)

女同士に本当の友情は育たないとよくいわれる。ジェラシーが激しいからだそうな。本当にそうかしら? 私には、親友と呼べる女性ピアニストがいる。縁あって同じ音高・音大にすすみ、デビューしてからも互いの活動を励ましあっている。お…

【書評】大野芳 著「近衛秀麿 日本のオーケストラをつくった男」(サンデー毎日 2006年7月2日号)

早く来すぎた理想主義者の肖像 洋楽黎明期の名指揮者近衛秀麿は、一八九八年、由緒ある近衛侯爵家の次男として生まれた。兄は三七年と四〇年に首相をつとめ、戦犯容疑で逮捕直前に自決した近衛文麿である。 音楽家だけみても、フルトヴ…

【書評】クリスチャン・ガイイ著「ある夜、クラブで」(すばる 2005年1月)

至福のとき 「ある夜、クラブで」クリスチャン・ガイイ著(野崎歓 訳) もし私がピアノをやめてしまって(私は、しょっちゅうピアノをやめている)十年たって、出張中に偶然はいったクラブで自分そっくりに弾く若いピアニストを見たら…

【特別企画】「この音楽書が面白い!」(レコード芸術 2004年7月号)

最高に面白いオススメの一冊 『グルダの真実』クルト・ホーフマンとの対話 田辺秀樹訳 グルダの弾くベートーヴェン『ワルトシュタイン』の爽快な演奏を聴きながらこの原稿を書いている。 本書は、オーストリア放送協会のディレクター…

【書評】金原ひとみ 著「蛇にピアス」(サンデー毎日 2004年2月29日号)

最近、若い作家の小説が、どんどん遠くなる感じがしていた。トシのせいかとも思ったが、「蛇ピ」はぴたっときた。なぜだろう。 理由は二つ、三つかな、ある。ひとつは、文章がきれいだということ。流れとリズムがいいのと、その場にすっ…

【書評】中山可穂 著「弱法師」(週刊現代 2004年3月20日号)

タブーを秘めた愛のかたちを能の世界の「妖しさ」に重ねて 中山可穂は、異形の愛を描いて魅力のある作家だ。それも、同性愛、両性愛、近親相姦などステレオタイプ的な区分けではなく、クロスオーバー、あるいは潜在的にとどまっていると…

【書評】米原万里 著「真昼の星空」(週刊現代 2003年11月1日号)

目に見える現実の裏に控える   もう一つの真実をえぐり出す 米原万里さんは一九五〇年生まれ。私も同年だからわかるのだが、微妙な年代だ。 子供のころは、まだ戦後をひきずっていた。それから突然宅地開発がはじまり、皇太子ご成婚…

【書評】藁科れい 著「永遠と1日」(幻冬舎 星星峡 2003年10月号)

『脱脂粉乳』世代におすすめの一冊 大学一年の娘から「無駄に若い」と言われる私は、たぶん死ぬまでこどものままのような気がする。私だけではない、多くの演奏家仲間やピアノの先生たちもそうだ。みんな本音で生きていて、お箸がころが…

【書評】小川洋子 著「博士の愛した数式」(サンデー毎日 2003年9月21日号)

80分で消える記憶だから 原稿の依頼が来ると、壁にはりつけることにしている。原稿だけではない。コンサートの招待、雑誌の切抜き、貸衣装の即売会。そうしないと、あっという間に机上のトロイ遺跡に埋もれてしまう。 本書の「博士」…

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