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◆書評、CD評
書評 『ピアニストが見たピアニスト』マンスリー みつびし 2006年2月号
華麗な演奏のかげに隠された名演奏家の心の揺れ
『ピアニストが見たピアニスト』
川本三郎「私のメディア日記」
 クラシック音楽のなかでいちばん好きなのはピアノ曲。演奏会では、ピアニストたちの、人間業とは思えない家令な指の動きと、楽譜をみないで弾く暗譜に圧倒されてしまう。客席からは見るピアニストたちは、自信にみち、悠然と演奏しているように見えるが、実際にはそうではないという。名ピアニストといわれる人たちが、意外なことに演奏の前には極度の不安、緊張にさいなまれる。
  ドビュッシーの名演奏家として知られる青柳いづみこさんは『ピアニストが見たピアニスト』のなかで、リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、フランソワら現代の名演奏家の真実の姿に迫っている。
  ミスタッチをするのではないか。暗譜がうまく出来ていないのではないか。巨匠といわれる人々が演奏の前に不安になる。
  リヒテルは59歳のとき、来日する飛行機のなかで、暗譜に自信がなくなり「ピアノが怖くてひけない」と不安に襲われる。パリから飛んで来た主治医はいう。「簡単なことだ。譜面を見て弾けばいい」。結局、1994年の来日公演でリヒテルは楽譜を見て演奏することになった。
  ミケランジェリは1965年に来日した時、上野の東京文化会館に向かう車のなかで、恐ろしいけいれんに見舞われた。
  彼はまたドビュッシーを演奏していて突然、心臓発作に見舞われたこともある。  サンソン・フランソワは、やはりドビュッシーの演奏に向かう途中、ホテルのエレベーターで心臓発作を起こし、死亡。まだ46歳の若さだった。
  この本を読むと、華麗に見える演奏が実はいかに過酷なものかが分かり粛然とする。
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