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舞台でのピアニストは華麗で堂々としている。その超人的な指の動きには圧倒されるし楽譜も見ずに長い曲を弾きこなすのは神業としか思えず、ただ頭が下がる。 しかし、そのピアニストが実は、舞台に出るまでは緊張の連続なのだという。私生活でもすべてを音楽に捧げ、神経をすりへらしているという。 自身もピアニストである青柳いづみこさんは、そうしたピアニストの苦しみ、不安、日常の鍛練、孤独を『ピアニストが見たピアニスト』のなかで共感を込めて描き出してゆく。一読、ピアニストとは、人間の職業のなかでももっとも孤独なものと思わざるを得ない。一見、華麗に見栄ながら命がけで仕事をしている。聴く者に喜びを与える仕事が、こんなに苦しいものだったとは。 取り上げられるピアニストは、スピャトスラフ・リヒテル、ベネデッティ=ミケランジェリ、マルタ・アルゲリッチ、サンソン・フラサンソワ、ピエール・バルビゼ、エリック・ハイドシェックの六人。 超一流のピアニストが演奏の前には極度の緊張にとらわれる。ミスをするのではないか、思いどおりの演奏が出来るのか。暗譜がきちんと出来ているか。 そればかりではない。驚くのは、最高の演奏をすることさえ畏れるピアニストもいる。いったん至高の瞬間を体験してしまうと、それを継続させるのが難しくなるから。至高の状態を再現するためには、さらに努力し、精進しなければならない。ピアニストとはなんと過酷を職業なのだろうと驚かざるを得ない。 ミケランジェリは演奏中に心臓発作で倒れた。幸い、一命はとりとめたが、サンソン・フランソワは演奏直前に心臓発作で倒れ、病院に運ばれて息をひきとった。まさに命がけ。 ハイドシェックは、フランソワほどの名声を得られなかったが、その理由として「自分は生きているからだ」と答えたという。つまり超一流のピアニストは、普通の人間の暮らしをしていない、出来ない超絶的存在という意味なのだろう。(後略) |
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