【コンサート評】「ドビュッシーをめぐる新しい湖流〈1916年〉」音楽の友2016年12月号

「美しかりし時代」から「狂乱の時代」へ

気持ちの良い10月半ばの土曜日の午後、代々木公園の緑を目に、Hakuju Hallに向かった(15日)。井の頭通り沿いに立つ建物の7階に到着すると、すでに違った時間が流れていた。青柳いづみこが企画し、高橋悠治とともに出演する演奏会「ドビュッシーをめぐる新しい潮流〈1916年〉」が始まるのだ。

この演奏会は、2018年のドビュッシー没後100年に向けた、カウントダウン企画の一つとのこと。「ベルエポック(美しかりし時代)」から「レ・ザネ・フォール(狂乱の時代)」へ——世界が変わり、そして、ドビュッシーもまた変わってゆく第一次世界対戦前後のパリの音楽界を、青柳と高橋は、1台のピアノで見事に描き出してゆく。

プログラムの軸は、サティ《バラード》にはじまり、ラヴェル《マ・メール・ロワ》、ストラヴィンスキー《春の祭典》へと受け継がれるピアノ連弾による楽曲。そのあいだに、高橋のソ口による「6人組のアルバム」と、青柳のソロによるドビュッシー《聖セパスティアンの殉教》が置かれた。同じく二人の共演による、CD「太田黒元雄のピアノ」がリリースされたところでもある。アンコールでは、サティのほかに、その関連曲の楽曲も少し。

二人のユーモア溢れる卜ークとともに、すばらしく洗練された音楽に耳を傾けていると、次第にドビュッシーが顔を出すサロンに自分も居合わせているかのように思えてきた。ドビュッシーが生きていた100年前へと時間の通路を開く、魔法の演奏会であった。

取材・文=藤田茂

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