【インタビュー】ショパン2016年10月号

青柳いづみこさんの意欲的なドビュッシーのシリーズの第3回『ドビュッシーをめぐる新しい潮流〈1916年〉』が、10月15日(土)白寿ホールで開催される。2018年のドビュッシー没後100年に向けて、ちょうど100年前のドビュッシー作品を軸にプログラミングするシリーズだが、今回の1916年はドビュッシーは病床にいて、新作を生み出せないでいた。

「大腸がんだったのですが、知らされてはおらず、ずっと寝込んでいて放射線治療をしていました。前年には《チェロ・ソナタ》、翌年には《ヴァイオリン・ソナタ》がありますが、この年は1曲も書いていません。唯一、1911年に付随音楽として発表した神秘劇《聖セバスチャンの殉教》のオペラ化を夢見ていたくらいです。異教的なところも多い内容だったので、カトリック教会から信徒への観覧禁止令が出る等バッシングを受けていました。

今回は弟子のアンドレ・カプレがピアノソロに編曲したものの中から、《百合の園》《法悦の踊り》を演奏します。《百合の園》は《前奏曲集第2巻》の〈カノープ〉に似ています。《法悦の踊り》はラヴェルが1908年に書いた《夜のガスパール》の〈スカルボ〉を思わせます。今回は演奏しませんが、《魔術の部屋》という曲は《前奏曲集第1巻》の〈野を渡る風〉にそっくり。だいたいその時書いていた他の作品になんとなく似ていますね」

1916年は第一次世界大戦まっただ中。混沌とした時代の中、音楽界には新しい潮流が生まれていた。「サティが《バラード》を書いた年ですね。その前年にサティとコクトーが出会ってドビュッシーとラヴェルを否定する6人組への動きが始まっていました。

1913年にはドビュッシーのバレエ《遊戯》がストラヴィンスキーの《春の祭典》の騒動にかき消されたり、13歳年下のラヴェルはずっと弟分だったのに出世が早く、自分が何も書けないのに後輩たちがどんどん新しい試みを始めてやきもきしていたでしょう。そのあたりの作品を組み合わせていきます」《春の祭典》は、今回は《バラード》、ラヴェル《マ・メール・ロワ》とあわせて、高橋悠治さんとの連弾だ。

「《聖セバスチャンの殉教》とは異教の儀式ということでリンクしますね。連弾で手が交差しますが、悠治さんは椅子がとても低くて私は高いので、ぶつからずにすむでしょう(笑)。実際に弾いてみると、ここがドビュッシーに影響を与えたのかというところがよくわかります。ドビュッシーはなんのかんの言ってもサティを評価して《ジムノペディ》のオーケストレーションをしているし、同時代の作曲家ということでお互いに意識していたのは確かですね」

混沌の時代から生まれた新しいエネルギーを体感できる演奏会になりそうだ。

(文◎編集部坂井孝著)

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