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執筆&インタビュー

巻頭随筆 /月刊『大阪人』 2005年8月号
  ショパンを聴きながら

 
  今、仕事でSP時代の名ピアニストたちの弾くショパンばかり聴いている。
  ファッションもボディコンが流行ったりHラインが流行ったりするように、ショパン演奏もそのときそのときでスタイルが変わってきた。
  私の学生時代は、あんまりテンポをくずしてはいけません、と言われていた。でも、今から百年ほど前には、逆にくずさないといけません、と言われていたらしいのだ。
  ショパンの孫弟子たちのショパン演奏はペダル少なめの清純系だが、リストの弟子たちの弾くショパンは、のーびたりちぢんだーりの妖艶系。リストの弟子のそのまた弟子のフリードマンという人のピアノを聴いたときなど、あんまり思い切ってデフォルメしてくれるもんだから、椅子からころげ落ちそうになった。
  待てよ、この演奏、何かに似ているなぁ、と思った。そうだ、大阪音大で教えはじめたころに聴いたピアノだ。オーディションで選抜された学生のコンサートに行ったら、ショパンの『協奏曲第一番』のメロディが、美空ひばりの『りんご追分』みたいに聞こえた。

  ショパンの弾き方は、土地柄によっても違うのだ。東の音大生はすっきり、さっぱりしたショパンを好むし、西の音大生はコテコテのショパンを好む。いや、好んでいた、というほうが正確だろうか。
  年十回のペースで大阪に来るようになってもう十二年ほどたつが、最初のころはとってもおもしろかった。考えもつかないようなアプローチもずいぶん聞かせてもらったし、どうしてこんな手つきでこんなにうまく弾けるのかわからないピアノもあったりして、ちょっと困りながらも楽しんでいた。自分も、ずいぶん影響されたような気がする。
  でも、このごろ少し優等生っぽくなってきたゾ、大阪の学生さんたち。
  以前は、高校から本格的にピアノを始めたような学生さんたちも多かった。まだピアノに飽きていないので、ちょっとヒントを与えると、びっくりするぐらいのびた。一たす一が十にも二十にもなる感じで、それが愉快だった。
  このごろは、そうはいかない。 妙に計算高くなっている。 誰がなんと言おうと、自分はこう感じるんダ、というビンビンのエネルギーが感じられない。でもだからといって、東のような精密さがあるわけではない。どっちつかずだ。
  楽しいピアノを聴いたあとは、帰りの新幹線もルンルン。ちっとも疲れを感じない。でも、レッスンがうまくいかなかったときは、東京までの道のりがやけに長く感じられる。
  また、疲れを吹きとばすようなショパンを聞かせてくれよお。

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