【連載記事】「とっておき私の京都 第4回」(週刊新潮 2005年12月15日号)

私の京都 とっておき 京都芸術センター

とっておきの私の京都第4回1畳敷きの大広間に年代モノのピアノ。それを挟んで対峙するのは、ピアニストの青柳いづみこさんと型染作家の伊砂利彦さん。研究テーマにドビュッシーを選び、演奏曲目としてきた青柳さん。一方、今年、東京国立近代美術館工芸館が個展を開催した伊砂さんは、クラシック音楽を題材とする作風で知られ、代表作にドビュッシーの『前奏曲集ⅠⅡ』をイメージした作品群がある。「僕は、ずっと前からあなたの演奏を聴きに行っていますよ」と話す京都育ちの型染作家に、東京生まれのピアニストがいう。「私の方は、先生の作品が描かれた絵葉書を目にして以来のファン。ドビュッシー音楽の揺らぎや移ろいなど奥深い部分が、濃淡の意匠の中に見事に表現されています」。相思相愛。そんな二人によるコラボレーションが、来年2月、京都で実現する。前述の伊砂作品が展示された中、青柳さんがドビュッシーを演奏するのだ。

室町蛸薬師。舞台となるのは、呉服問屋が立ち並ぶ界隈にある京都芸術センターだ。昭和6年建造の建物は洋風のモダンな外観を持ち、壁を彩るステンドグラスやアーチ状の窓などデザイン面でも手が込んでいる。が、この瀟洒な洋館、平成5年まで、現役の公立小学校の校舎だった。明倫小学校という校名は、江戸時代、京都町人に大きな影響を及ぼした心学塾の明倫舎にちなむ。 124年間、室町の町衆に親しまれ、廃校が決まった後も文化財的価値を評価する声が高く、平成12年、芸術振興を目的とする拠点に。館内にはカフェも設けられており、学校の教室でティータイムと洒落込む人たちで連日大賑わいだ。写真のピアノは、チェコの名門ペトロフ製で大正時代の銘器。演奏会の前夜、プレトークで試演が予定されている。伊砂作品の着物を身に纏った青柳さんがいわく、「このコラボレーション、ドビュッシーの母国フランスでも実現させたいですね」撮影・田村邦男

とっておきの私の京都第4回2アクセス
京都芸術センター/075・213・1000/中京区室町通蛸薬師下ル山伏山町546―2/東海道新幹線・京都駅下車~地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩5分

*文中の演奏会
2006年2月18日14時、プレトーク=2月17日19時を予定

プラス1
北国銀行京都支店/竣工は大正5年。赤煉瓦に白い石。辰野金吾事務所の設計によるモダン建築。/中京区烏丸通蛸薬師下ル手洗水町645/東海道新幹線・京都駅下車~地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩3分

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