【連載】「PICK UP やさしい愛のメッセージ」(芸術新潮 2014年8月号)

チョン・ミョンフン『エリーゼのために〜マエストロからの贈りもの』

ユニバーサル ミュージック 2808円(税込)
青柳いづみこ選・文

ドビュッシー『月の光』、ベートーヴェン『エリーゼのために』、シューマン『トロイメライ』などの名曲が、いつくしむようなタッチで奏でられる。まるでゆりかごに揺られているような、やすらいだ気持ちになる。

演奏は韓国の世界的指揮者、チョン・ミョンフン。1974年のチャイコフスキー国際コンクールピアノ部門の第2位。一時はピアニストとして活躍していたものの、指揮活動がメインでソロ活動はおこなっていない。

このアルバムは、次男がつとめるレコード会社で収録したもの。一曲一曲を愛する家族に捧げるようなつもりで演奏したというコメントどおり、親密な内容になっているが、メロディの歌い方、ハーモニーの支え、ふとした間のとり方など、指揮者としての豊富な経験がものを言っている。

ピアノ演奏は華麗な技術ではなく、聞き手に一番きれいな心を届けることなのだというメッセージが伝わってくるアルバム。

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