【連載記事】「とっておき私の京都 第3回」(週刊新潮 2005年12月8日号)

私の京都 とっておき ブルーマー 55

とっておき私の京都 第3回1

フランスの美食家サヴァランはいう。〈どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人であるかを言いあててみせよう〉。和洋中華にエスニック、さまざまな店が犇く京都・木屋町界隈。フレンチ・レストランの『ブルーマー55』で、オムレツを口に運んでいるのはピアニストの青柳いづみこさん。某料理評論家が、「お菓子のような味!」と唸った逸品に納得の表情を浮かべる。泰西の食通はこの情景を見てどんな解答を与えてくれるだろう。「貧乏人メニューと金持メニューがあり(笑)、シェフの堀口博さんが懐具合に応じて見繕ってくれます」と青柳さん。「雉の丸焼きから若狭ぐじのような和の食材まで、こちらの料理はサプライズの連続。お酒もワイン一本槍ではなく、東京の銘酒・澤乃井があったりする。お勧めは個数限定のトランペット茸です」

青柳さんといえば、当代一流の6人の演奏家の技と心の秘密に迫った近著『ピアニストの見たピアニスト』が評判だ。6人のうち、フランスの名演奏家エリック・ハイドシェック氏とは、縁あってここ 10 年、家族ぐるみの付き合いを重ねてきた。半年前には、演奏旅行に来日中だった演奏家と京都で旧交を温めた。「祇園で懐石をいただいた後でお腹はいっぱい。でも話が尽きないので、こちらへ立ち寄りました」。パテを肴に赤ワインを飲んでいるうち、牛テールの赤ワイン煮込みが大皿に載って出てきた。「これが絶品。気がつくとエリックは、骨にしゃぶりついていた」。ちなみに店名の〝55(フィフティ・フィフティ)〟には、「客も店も対等。自分の部屋に帰ったつもりで」という思いが込められている。一方、〝ブルーマー〟は「花開く」&「大失敗」、いずれの解釈も可能だ。開業して27年。名物シェフのいちかばちかの心意気が、最高のご馳走なのかもしれない。撮影・田村邦男

とっておき私の京都 第3回2アクセス
ブルーマー55 /075・255・3424/中京区御池通木屋町下ル上大阪町ウエバビル3F/東海道新幹線・京都駅下車~「河原町御池」バス停から徒歩5分

プラス1
めなみ/開業から60余年という老舗のおばんざい屋。現在は3代目が腕を揮う。家庭的な雰囲気で昔からの常連客が多い。/075・231・1095/中京区木屋町三条上ル中島町/東海道新幹線・京都駅下車~「河原町三条」から徒歩5分

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