【関連記事】「浮遊するワルツ」ショパン 2003年11月号 文・今枝千秋

ワルツの浮遊感を、みんなで味わいましょう!

2年ぶりにリサイタルをする。今回のタイトルは『浮遊するワルツ』。シューベルトの『高雅なワルツ』に始まって、リストの『メフィスト・ワルツ』やショパンの『華麗なるワルツ』『子犬のワルツ』など、ワルツばかりを集めたひとときだ。フランスで学んだから、というわけではなく、じつは子どものころから、アン・ドゥ・トロワと軽やかなステップのワルツが、好きだったのだそうだ。そしてとりわけ、2拍目から3拍目に移るときの、フワッという浮遊感--それを、客席もともに味わってほしいと、青柳さんは語る。

「プログラムにも、それぞれに繋がりがあるのよ。2曲目のラヴェル『高雅で感傷的なワルツ』は、タイトルばかりか、不協和音こそ使ってるけど、出だしなんかもシューベルトにそっくりだし、またラヴェルが『ラ・ヴァルス』を作ったくらいウインナワルツが大好きだったのに対して、ショパンは嫌いだったのね。ウインナワルツが流行した当時ウィーンにいて、楽譜を出したくてもワルツの出版に追われる楽譜屋だから、断られどおしだったんですって。だから、自分のワルツはダンスのためのものじゃない、芸術だって、手紙にも書いたりしている」

また、サティの『嫌らしい気取り屋の3つの高雅なワルツ』は、朗読つき。東京公演では、オペラを勉強中で、ナレーションで歌手とも共演している下重暁子さん、大阪は『パンツが見える。-羞恥心の文化史-』等の著書で、地元でブレイクしている、学者の井上章一さんが担当する。サティ独特の皮肉たっぷりの台詞が、音楽とどうコラボレートするか好奇心がそそられるが、できることなら各1度の公演でなく、キャスティングをチェンジしたバージョンも、ぜひ聴いてみたいと、興味が湧く。

ところで青柳さんといえば、朝日新聞の書評委員としても活躍する文筆家でもある。演奏家と作家。その片方でさえものすることは困難なのに、両方を難なく手にするなんて、やっぱり世の中不公平だ。と思いながら、両者の関連性について、訊いてみることにした。

「演奏家が、楽譜見るだけで音楽が沸き起こってくるのと同じように、人に会ったり景\色を見たり、なんか嬉しいこととか悲しいこととかあると、言葉が浮かんでくる。その\とき感じたセンセーションを、音で翻訳するか言葉で翻訳するかのちがいだけね。たと\えば小説を書くのでも、ひとつのテキストに対して自分が感じたこととか推理したこと\、言いたいこととかを言葉にするわけで、だから私は、演奏家発想なんだと思う」

書く部屋で詰まると、弾く部屋に。そちらがうまくいかないと、また書くほうへ。相\反する価値観が同居する双子座だから、往復しているうちに「パニックに陥る」ことも\、しばしばだ。と言いつつ、来年はピアニスト論を出すつもりだと、高らかに語った。

浮遊するワルツ
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