【書評】「ピアニストたちの祝祭」公明新聞 2014年8月4日 評・越谷政義(音楽評論家)

音楽への柔軟な姿勢が噴出

音楽にはいろいろなスタイルがあり、それぞれのパフォーマーが得意とするジャンルでそのフィールドの愛好者の前で演奏する。記録として残された音源や映像も、やはり特定の愛好者が中心になって味わうことになる。しかし、音楽を楽しむ側としては、ひとつのジャンルに拘(こだわ)ることなく、さまざまなテイストを味わってみたい。

ピアニスト/文筆家の青柳いづみこは、ドビュッシー研究の第一人者であり、沢田研二や松田聖子のコンサートを楽しみ、ポール・マッカートニーのチケットもしっかり買い求める。この地球上には素晴らしい音楽が点在していることを教えてくれる伝道師のようだ。本書には、彼女のそんな音楽に対する柔軟な姿勢が噴出している。

マウリツィオ・ポリー二やマルタ・アルゲリッチのように世界の名ピアニストの音楽祭や連続コンサートを聴き、詳細に論評を加える。内田光子の演奏では、彼女と東洋の美意識とのかかわりに着目。いっぽうで、ショパンの同時代人で奇人で知られるアルカンの生誕二百年を記念する連続コンサートや、女性作曲家に焦点を当てた、”知る人ぞ知る”音楽祭も見逃さない。

小澤征爾(せいじ)が音楽監督をつとめるサイトウキネン・フェスティバルでは、大西順子のジャズ勉強会に密着取材する。かと思うと、クラシック界ではタブーとされているフジコ・ヘミングの演奏も追いかける。

青柳いづみこのジャーナリスティックな鋭い切り口と問題提起には、ピアニストとしての意識が介在し、より強烈なインパクトを投げかける。その意味で、自ら出演した《ラ・フォルジュルネ「熱狂の日」音楽祭》レポートは、まさに彼女の独壇場。

巻末には、《日本人がショパン・コンクールで優勝できない理由》と題して、同コンクールの1985年の入賞者で2010年には審査員をつとめた小山実稚恵(みちえ)との対談が置かれている。5年に一度しか開かれないコンクールへの期待、そして、日本ショパン協会理事でもある青柳が2015年にはどんなレポートを記すか胸膨らむ。
(中央公論新社1998円)

ピアニストたちの祝祭
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