【書評】「ピアニストたちの祝祭」産経新聞 2014年6月15日朝刊 評・青澤唯夫(音楽評論家)

演奏者としての視点が魅力

音楽の聴き方はさまざまだから、そこから受け取るものも人によって、聴く時々によってちがう。他の人の見解に共感することもあれば、自分と異なる聴き方を知るのも興味深い。音楽は聴けばわかるじゃないかで済まさずに、こうした本を読むのも楽しい。現役のピアニストで、練達の文筆家としても活躍する青柳いづみこの新著は、話題を呼んだ人気音楽祭の見聞録。

ラ・フォル・ジュルネ、サイトウ・キネン・フェスティバル松本、別府アルゲリッチ音楽祭、女性作曲家音楽祭、アルカン生誕200年記念コンサートから、ポリーニ、バレンボイム、内田光子、フジ子ヘミングと多彩だが、読み終えてみるとその選択にも彼女の問題意識が強く働いているのがわかる。

コンサート・リポートは、企画内容のほかに書き手自身の興味や読者の関心への配慮が交錯して読み物としての魅力が生まれる。

青柳がユニークなのは演奏者としての立場や視点が生きていることで、ラ・フォル・ジュルネは2007年に観客、13年には出演者としてリポートしている。演奏会の企図や出演者の奮闘ぶり、それを聴いた貴重な体験の報告。ポリーニ、海老彰子、児玉桃らの演奏を評しながら、自らの演奏者としての苦心や作品への造詣の深さが顔をのぞかせる。

「コンクール優勝をきっかけに注目されるのはよいが、人気だけが先行してしまうのはとても危険。ピアニストは客席の雰囲気も感じ取って演奏していく。演奏やその人のことがわかって、曲もある程度知っていて、一緒に応援しながら作っていくお客さんがついてくれるのが望ましい」(要旨)といった発言は説得力がある。

2002年から13年にかけて『すばる』『文学界』『芸術新潮』への掲載、書き下ろし、ショパン・コンクールをめぐる小山実稚恵との『中央公論』の対談をまとめたものだが、音楽専門誌の枠を超えた視界の広がりや問題提起は、クラシック音楽の若い聴衆が育たないこの時代にこそ必要にちがいない。

ピアニストたちの祝祭
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