【書評】「グレン・グールド 未来のピアニスト」MOSTLY CLASSIC 2011年10月号 評・MOSTLY CLASSIC編集部

衝撃の演奏家グールドの謎に迫る

グレン・グールドが亡くなって29年になる。グールドに関する著作が途切れることはない。それでもまだ語り尽くされていない魅力がある。本書は著者がピアニストとしての視点を生かし、「『対位法人間』グールドをつなぐ一本の線を浮かびあがらせる」。

グールドは1956年、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」でレコード・デビュー。その新鮮な演奏解釈は衝撃を巻き起こした。新しい「クール」なクラシック演奏家としてアイドル的な人気さえ獲得した。その特異な演奏スタイルは聴衆を驚かせた。父親が作った椅子は背もたれが90度以上に傾斜し、床上約30センチという低い位置に座り、鍵盤の上にかがみ込み、ハミングをする。

著者は残された録音や映像を非常に詳細に分析していく。「ベートーヴェンの協奏曲でもソナタでも、左手の伴奏形などでは指を鈎型に曲げ、第三関節のバネを駆使して弾いている。その正確さと敏捷さは驚異的で、きびしい訓練のあとをうかがわせる」といった件など、著者ならではの着眼点だろう。

グールドの演奏がすべて「知的でクール」、ノン・レガートでハープシコード風かというとそうではない。少年時代、キワニス音楽祭に出演した際の審査員のコメントは「ペダルを使いすぎる、レガートで弾きすぎる、テンポが速すぎる」、つまり「過度にロマン主義であること」だった。それはグールドの作曲作品にも表れている。

グールドは1964年、コンサートから引退し、録音だけで音楽活動を続ける。そして「録音で試みたのは、生身の自分をよりよく見せかける作業ではなく、自分自身の音源を素材にして新たな音楽のかたちを創造する」行為に勤しむ。本書は、パフォーミング・アーティストとしてのグールドの音楽と、録音に聴くグールドの音楽には大きな乖離があったことを見事に検証し、未来を志向した特異なピアニスト、グールドを浮き彫りにする。

グレン・グールド 未来のピアニスト
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