【書評】「グレン・グールド 未来のピアニスト」ショパン 2012年1月号 評・小山実稚恵

ピアニストが薦める一冊

とにかく魅力的な本です。グールドの人物像と共に、唯一無二である彼の音楽の魅力があますところなく描かれているのですが、しかし、これはグールドを知る本ではなく”演奏すること”とはどういう事かということを考える本なのだと思いました。著者の青柳いづみこ氏がグールドの演奏をピアニストならではの目線でとらえくっきりと鮮やかに分析しています。演奏哲学、アイディア、性格や体躯的特質に依存する演奏技術等々どこをとっても興味深く、「そう、そうだった!」と気付き納得しながら読み進めました。

たくさんのヒントがあり、読みながら、ああしでみようこうしてみようとピアノに触れてみたくなる瞬間が何度もあり、実際にピアノに触れて確かめたりるしました。演奏するということは、何かを伝えること……そのためには、自分で自分を知らなければならないのです。その上で自分らしくあるということが、極めて難しいことであると考えさせられる一冊でした。

グレン・グールド 未来のピアニスト
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